384 :
3/8:2020/09/08(火) 14:45:33.95 ID:6Gs5o4Y10.net
「あの砂のとこ、アリジゴクがいそうだな」N君がそう言って
高床の下にもぐって行きました。僕も後を追って入ろうとしたら、
お堂の裏戸が開いて、白ワイシャツを着た背の高いおじいさんが出て、
階段を降りてきました。おじいさんが僕のほうをジロッと見たので、
動きが止まりました。おじいさんは、
「これでもね、いちおう、神社だから、お参りしないで、遊んじゃ、だめだよ」と、
ぜいぜいした音の入ったとぎれがちの声で言いました。
そして大きく腰をかがめ、N君の後を追ってお堂の下に入っていきました。
そのとき広場のほうで笛が鳴るのが聞こえました。
学年主任の先生が首からかけてるやつで、これが鳴ったら集合の合図でした。
385 :
4/8:2020/09/08(火) 14:46:35.61 ID:6Gs5o4Y10.net
「あっ、戻らなくちゃいけない」と思いましたが、
N君もおじいさんも出てきません。どうしようか迷いました。
そしたらおじいさんが床下から顔を出して、
「今の子、・・・君の、友だちは、向こうから、走って、
出て行ったぞ」と言いました。「変だな」とすぐに思いました。
広場へ戻るには、僕から見えるところを通っていかなくちゃならないからです。
でも子どもだったので、神社にいる大人の人が嘘をつくはずがないとも
思いました。それで笛の合図をしているほうに走りだしたんですが、
後ろを振り返ったとき、お堂の床下の光と影が境目に
なっているとこに、半ズボンをはいた子供の足が、
こちらに向かって伸びているように見えたんです。
386 :
5/8:2020/09/08(火) 14:47:36.97 ID:6Gs5o4Y10.net
息せき切って広場に戻ってみると、みんながクラスごとに整列して、
先生方が輪になってなにやら話をしていました。
N君の姿はありませんでした。列の前にいたやつに
「まだ時間じゃないよな。どうしたの」と聞いたら、
「Nが蜂に刺されたらしいよ」と言いました。
驚いて「えっ、いつ?」とさらに聞いたら、
今度は列の横の女子が「10分くらい前」と答えました。
10分っていったらまだ、N君があのお堂に入る前なのに・・・
女子は続けて「わたし見ちゃった。N君の目の上がこぶみたいに腫れて、
転げまわって苦しんでたの。口から黄色いものをボタボタ垂らしてて、
怖くなっちゃった」だれか別の生徒のことを言ってるのかとも思いましたが、
点呼をしたとき、N君以外のクラスのメンバーはそろってました。
387 :
6/8:2020/09/08(火) 14:48:51.92 ID:6Gs5o4Y10.net
救急車の音が聞こえて、数分後、去って行く音に変わりました。
他のクラスの担任の男の先生が舗装道路のほうから走ってきて、
「今、◯◯病院に搬送しました」と先生方の輪に入って報告しました。
学年部長の先生が前に出てきて、「N君がケガをしたために
遠足はここまでにして帰ります」と説明しました。
僕はことの経緯にぜんぜん納得できませんでしたが、N君のことは心配でした。
ただ、蜂に刺されたというN君なのか、お堂の下で見えたN君らしい
足のほうなのか、どちらを心配していたのか自分でもよくわかりませんでした。
小学校まで歩き、校庭で簡単な式を行ってから解散しました。
家の近くまで来たとき、塀の陰から、
広場のお堂で見たおじいさんが不意に出てきました。
388 :
7/8:2020/09/08(火) 14:50:13.05 ID:6Gs5o4Y10.net
ギクッとして足を止めました。
おじいさんの背はさっき階段で見たよりはるかに高く感じられました。
おじいさんは空を見上げていて、僕のほうは向きませんでした。
そのままの状態で「あれね、もらって、おくことに、したよ」
こう言いました。そして長い痩せた体を2つに折って咳き込み始めたんです。
そのすきに側から飛び離れ、家に向かってかけ出し、ふり返りませんでした
N君は数日後学校に出てきました。顔が変わってると思いました。
蜂に刺されたのは左目の上で、かすかに腫れは残ってましたが、
目鼻立ちは変わらないものの顔が平面的になり、
背も少し高くなったような気がしました。
それだけじゃなく人間全体の印象がガラリと変わってたんです。
ただ、クラスのみんなはあまりそう思ってないみたいでした。
389 :
8/8:2020/09/08(火) 14:51:14.20 ID:6Gs5o4Y10.net
N君は遊び方も以前とは違って、ゲームやテレビ番組の話題しか
しなくなりました。僕とはまったく話が合わなくなり、
いっしょに虫取りに行くことなんかもなくなったんです。
最後にN君と遊んだのが5年生のときでした。その頃はクラスも違い、
行動を共にすることはまったくなかったんですが、
うちの母親が昔から遊んでたのを覚えていて、
親を通じて僕の誕生会に呼んだんです。N君はぶすっとした感じで
やってきましたが、話はゲームのことばかりでした。
誕生会が終わって何人かは帰り、何人かは残って僕の部屋で
いっしょに過ごしました。N君は帰ると言ったんで見送りに出ました。
N君は玄関にある水槽を見ていましたが、僕の他に誰もいないのを
確認すると、おもむろに手を突っ込んで金魚を一匹つかみ出しました。
バタバタする金魚を右手で強く握り、ボタボタと赤い汁を垂らしながら、
平たい顔で、「お前も一回、蜂に刺されてみろよ」ボツリと言うと、
金魚をつぶしながら帰っていったんです。
おわりなの
390 :
本当にあった怖い名無し:2020/09/08(火) 15:05:38.39 ID:aZhykJg70.net
>>381-389魚握りつぶしてもまず血みどろにはならんよ
内臓や糞便は出てくるけど
黄色い汁赤い汁で意味を持たせてるならともかくどちらも深い意味が無いからか
全体的に長いだけのよくあるものの繋ぎ合わせな浅い感じが出てしまっててすごく残念
この話を下地にもうちょい作り込めば面白くなりそうだと思う