ほんのりと怖い話スレ その85
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/occult/1338006880/
487:
1/4:2012/06/16(土) 08:18:48.08 ID:vkzkVp6NP
私は霊体験みたいなものはないのですが、人生で一度だけ、そう言えるのかなあ、という経験をしました。
話すとややこしくなって、友人に話してもあまり「怖くなかった」と言われ、このスレに書き込めるような
話かなあ、と思っていますが、わたし個人は「あちらの世界」に近づけた経験だと思っているので、
勇気をふりしぼって書いてみます。
ややこしい話なので、まずは自己紹介から。
私の家は祖父母が某カルト宗教の人でした。
祖父はそこでも偉い方の人です。近所の人たちを集め家で説法のようなことをしていました。
一方祖母は、私が物心ついたころには、子供から見ても明らかに心を病んでいて、意味不明なことを口走ったりする人でした。
私も私で、幼い頃は発達障害を疑われていて、毎月病院に脳波を計りに行ったりするような子でした。
母子家庭に近い環境だったのですが、祖父母の娘である私の母は、どちらかというと現実主義者で、自分で
起業したりするような人で、祖父母の宗教活動にはまったく関与していませんでした。
そんな環境でしたので、私は祖父母の家、カルト宗教の寄合所に預けられることが多かったのです。
488:
2/4:2012/06/16(土) 08:19:34.48 ID:vkzkVp6NP
私が小学生くらいの時の話です。
祖母が他人の空き地に無許可で祠のようなものを建ててしまったのです。
当然教団すべてに関わる騒ぎになります。
しかし祖母は、そこに祠を建てないとだめだと言い張ります。
地主さんは寛容な人で私たちのお話をちゃんと聞いてくれてはいたのですが、小さなビルを建てることが決まっていて、
その工事が始まる前までは置かせてくれるということになりました。
その後しばらくして、ビル建設が始まりました。祖母の祠は壊されてしまいました。
しかし、地主さんはわざわざビルに入る予定の会社を教えていただきました。
祖母と祖父はそれらのいくつかの会社に頼み込んで、一社から、オフィス内に小さな神棚を付けさせてもらう約束を
取り付けました。
ビルができ、約束通り(一階にある会社です)、そのオフィスに神棚を取り付けさせてもらいました。
私は中学生になっていて、病院にも通わなくなっていました。
489:
3:2012/06/16(土) 08:22:07.98 ID:vkzkVp6NP
私は東京の大学に進学しました。
祖父は私が中学生の頃に亡くなりました。祖母も、その心労からか、目の病気を患い、片目に義眼を入れ、
残っている方の視力もあまりないという状態でした。
入退院を繰り返し、たまに母の家に戻るくらいでした(祖父母の家は引き払ったのだと思います)。
しかし不思議なもので、そういった体であるにも関わらず、逆に祖母の心の病は回復しているようでした。
時々帰省して祖母に会うと、「祖母も昔はこうだったのだろうな」と思ってしまうぐらい、まともな会話ができる状態でした。
ある時祖母は、あの祠のことについて話してくれました。
悪霊というのは、どこからどこへ移動するわけでもなく、ふと気まぐれに表れてくるもので、その表れてくる玄関は、
「神がかり」になった人間ならわかる(多分あの時の祖母自身のことでしょう。そしてその場所があの空き地だったと)。
悪霊というのはまったくの無慈悲なので、一番最初に心が病んだ子供や女や老人を襲う(発達障害を疑われていた私も含まれるでしょう)。
また、悪霊が通り易い方角というのは大体決まっていて、その方角に当時の祖父母の家はぴったり一致していた。
つまり祖母は、自分を守ると同時に、私も守ろうとしていたのです。
とはいえ、薄情と思われるかもしれませんが、いきなりそんな話をされても私はピンと来ません。
490:
4:2012/06/16(土) 08:25:57.79 ID:vkzkVp6NP
私個人はその教団に入ってませんが、何か割り切れないものがあり、教団本部に手紙を書きました。
祖父の役職のお陰か、教団からはこちらがびっくりするほど丁寧なお返事をいただき、一人教団員を派遣して調査する、といった話になりました。
正直こんな事態になるとは思ってませんでした。
就職活動などもあり、教団からの話を思い出したのは、社会人になってはじめて帰省する時でした。
電話で教団と連絡を取り、調査していただく方、Aさんとしますが(40過ぎの女性でした)、彼女と一緒に帰省することになりました。
電話で幹部の方とお話した際、とても軽い調子で「テレビに出てくる霊媒師みたいなもんだよ」と言われましたが、
とてもそんな風には見えず、テレビや雑誌の話などをする、どこにでもいる普通の中年女性でした。
491:
5:2012/06/16(土) 08:35:17.46 ID:vkzkVp6NP
Aさんとの珍道中は省きます。
Aさんと問題の祠が建っていた場所に行きました。近くにコンビニなどが出来ていて、当時の面影はまったくありません。
そこに建っていたビルも、改修か建て替えたのか、当時とはまったく形が違うビルになっていました。
私がそこだと言うと、Aさんはビル全体を見渡し、周りを見渡しただけで、「わかりました」と言いました。
(え? 終わり?)
拍子抜けです。
続いて祖父母の家があった場所。大型スーパーの駐車場になっていました。
ここでもAさんは「わかりました」だけ。
494:
6:2012/06/16(土) 09:28:15.71 ID:vkzkVp6NP
そこから母の家は歩いて30分程度です。
家に帰りAさんの話を聞きます。母親は祖父母の宗教をあまり好ましく思ってないはずなのですが、好奇心に負けてか
テーブルの一角を陣取っています。
世間話が一通り済んだあと、Aさんはこんなことを言います。
「おじいちゃんの家の近くで、子供が不幸な亡くなり方してませんか?」
母は驚きながら答えます。
「ええ、近所で、高校受験に失敗した子が、ノイローゼになって自殺したらしいです」
「え、うそ」と私。
「ほんとほんと、あんたが大学行ったすぐあとぐらいだったかな」
Aさんの推測によると、祖母が頼み込んで設置してもらった神棚は、しばらくはちゃんと封じ込めとして機能していたけれど、
ビルの建て替えか、その会社が移転したかで、霊の玄関が開いたままになっていたのではないか、と。
495:
7:2012/06/16(土) 09:29:23.57 ID:vkzkVp6NP
「じゃあ、あの建て替えられたビルには神棚なんてないでしょうし、どうすればいいんですか?」
Aさんはお菓子をつまみながら世間話のように答えます。
「ああ、あれはもう大丈夫。だいぶ力はなくなってきてるみたい。それに、バレエ教室があったでしょ」
そう言われれば。
「霊にもよりますけど、ダンスや音楽で結構鎮めることができるんですよ。逆にそっちのが昔からの伝統的な、万国共通の霊の鎮め方なんですよね」
「はあ」
なんというか、肩透かしというか。
「亡くなられたお子さんも、いいご家族なのでしょう、この世に残ってはいません」
私はなんとなく居心地悪い感じがします。
「でも私のせいでそんな……」
「あなたのせいではないですよ。霊の玄関が開くのは自然災害みたいなものです。おばあちゃんはできることをやって、あなたを守った。それだけで立派です」
私は少し気分が軽くなりました。
なんというか、いろいろな世界があるな、と思った事件でした。
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